| 第4号 (5月21日発行) |
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★ ペドロランドの犯罪 地元の英字新聞「コスタ・ブランカ・ニュース」で、この地域でよく見られる犯罪のパターンを紹介したことがありました。この特集は読者の間で大好評でした。(だって、みんなこの手の記事が大好きだもの。)というわけで、今回はこの特集で紹介された犯罪パターンのうち、ペドロランドで実際に起こった事件について取り上げてみたいと思います。 コスタブランカの犯罪の中に凶悪なものはあまり多くない。多いのが窃盗、ひったくり、空き巣狙いなどの軽犯罪である。たまに殺人があるが、こういうのは、ロシア人やラトビア人など東ヨーロッパのマフィア同士の仲間割れだったり、ジプシーの家庭内紛争だったりする。スペイン人の名誉のために言うが、犯罪者は外国人が多い。ある統計によると囚人の10人に9人は外国人だそうである。特に、軽犯罪は圧倒的にモロッコ人や東ヨーロッパ人によるものが多い。 ペドロランドがまだ半分建設現場だった2年前、空き巣狙いがとても多かった。当時はまだ定住者が少なく、人目がなかったのでそれを狙ったものだろう。住宅モデル「ペドロ」の特徴の一つは、一階の窓にはすべて鉄格子がはまっていることである。普通の住宅モデルではオプションであるが、ペドロに関しては標準でついてきた。鉄格子というとまるで刑務所のようであるが、もちろん刑務所の鉄格子よりは装飾的である。夏は暑いのでどうしても窓を開け放す。そこを泥棒に狙われるので窓格子はなくてはならない。ところが、この鉄格子が取り外され、家から電気製品が盗まれるということがペドロランドあった。家の持ち主はイギリスに帰っていて、窓格子が取り外されているのをわたしたちが発見するまで盗難には全く気が付いていなかった。 その後、不法入国者を使っている雇用主は不法入国者一人あたま数万ペセタの罰金が課されるという法律が施行され、パコ(ペドロランドを作った建設会社社長)は大量のモロッコ人労働者を解雇した。それ以来、この手の空き巣狙いはほとんど見られなくなった。(そして、ペドロランドの完成は半年遅れた。) ところが昨年は家の持ち主がいる間に泥棒に入られるという事件が多発した。ドイツ人のウタがシャワーを浴びて出てくると、寝室で若い女性が物色中だった。(ウタのご主人はドイツで警察官をしている。盗難の報告のため警察に行った時にそれを言ったら、今度現行犯で泥棒を捕まえたら、だんなさんの警棒で思い切りぶちのめしてやりなさい、と言われたそうだ。もちろんオフレコだろうが、イギリスだったら冗談でもこんなことを警察官は言えない。)スウェーデン人のグレータが目を覚ますと、ベッドの横にモロッコ人男性が立っていて、財布入りのバッグをとられた。我が家の隣りのハンセン家では、居間のコーヒーテーブルの上に置いておいたバッグが盗まれ、約12万円相当の現金とクレジットカードを取られた。どうやら、犯人は近くでみつけた竹ざおを針金でつなぎ合わせその先にフックをつけて、テーブルの上に置いてあったバッグを釣り上げたらしい。窓さえきちんと閉めて寝ていればこんなことにはならなかったのだが。 ペドロランドの近くに誰も住んでいないアパートがある。ここをモロッコ人たちが占領していた。電力は街灯から横取りする。そこで、モロッコ人追い出しのために停電ということがときどきあった。でも、そんなことでくじけるモロッコ人ではない。しかし、ある日警察がやってきて、このアパートの入り口(玄関と窓)という入り口をすべてコンクリートブロックでふさいでしまった。さすがにこれには成すすべもなく、モロッコ人は立ち去り、ペドロランド近辺には平和が訪れた。 スーパーマーケットの駐車場は犯罪の巣窟である。ひったくりは年中であるが、去年の夏に流行ったのがタイヤ切りだ。狙われたのが、荷物満載の外国ナンバーの車。別荘に着く前に食糧の買出しを済ませようという人々である。こういう人々は休暇中に使う金をすべて出発前にペセタに換え(今年からユーロになったが)、ハンドバッグの中に休暇中の全財産を入れている。泥棒たちは、彼らがスーパーで買い物をしている間にタイヤに切れ目を入れる。自動車の持ち主が買い物を積み込み車を再び走らせると、タイヤがパンクしていることに気が付く。そこで路肩に車を止め、タイヤをチェックする。ここで親切な泥棒の登場だ。(イギリス人の間では聖書にちなんで「よきサマリア人」という愛称がついている。)トランクに積んだ買い物袋をすべて取り出し、その下にあるスペアタイヤに交換するのを手伝う。このどさくさに紛れて、もう一人がハンドバッグに手を伸ばす。どうもありがとうと、車で走り去る親切な人々に手を振りながら車の中に戻ったときには、現金とパスポートを入れたハンドバッグは消えているというわけである。 去年の9月にお向かいのヤンとティーニがオランダから到着した日、やはりタイヤのパンクに気が付いた。幸いなことに、彼らが買い物をしたのは近所のスーパーだった。家までわずか5分ということで途中で止まらずに家まで運転を続けた。おかげで、「よきサマリア人」は出番がなく、途中どこかで引き上げたようである。ヤンがタイヤ交換に行くと、修理工は「バンディードス」と言ったそうだ。ナイフで切った明らかな痕跡があったと言う。 1ヶ月ほど前に、「コスタ・ブランカ・ニュース」にカルタヘナに住むイギリス人男性からの投書が載った。詐欺師にご用心という話である。この詐欺師、名前をフランクと言う。スイスから妻と子供と一緒に車でスペインにやってきたが、パスポートに財布、クレジットカードを盗まれた。先ほど警察から電話があって、犯人をスペイン北部で捕まえたと言う。所有物を取りに行きたいが金がない。スペイン北部まで行くのに必要なガソリン代48ユーロを貸してもらえないか。必ず返すから。近くに停まっている自動車の中には、奥さんと思われる女性が助手席に座っている。子供の姿は見えない。このイギリス人男性はなかなか慎重であった。彼は自分の車でガソリンスタンドまでついていき、フランクにガソリンを入れさせ、その代金を払ってやった。結局フランクは金を返しに現れなかったが、被害はそのときのガソリン代24ユーロにとどまったわけである。 恥を承知で告白してしまうが、実はわたしたちもこのフランクにひっかかった。引っ越して間もない昨年の3月頃の話である。フランクは、うちのすぐ裏の住宅地内にある26番の家に休暇を過ごしにやってきた。この家は彼の両親の別荘である。ところが、泥棒に入られ、パスポートと全財産を盗まれた。玄関の錠を壊されたので錠前屋を呼んだが、フランクがいない間に来て錠を直し、帰ってしまった。代金を払わないと新しい鍵を引き渡さないという。家の中には入れないし、金がないので今晩泊まるところもない。錠前屋に払う4600ペセタを貸してもらえないだろうか。すでに両親には着信人払いで電話をし送金を頼んであるが、金が振り込まれるのは明日になる。借りた金は明日返すので、4600ペセタ貸してほしい・・・ということを流暢な英語で話すのだった。 母親がイギリス人であるわりには英語に訛りがある。なんとなく胡散臭いところもあるが、もしこの話が本当であったら、それは気の毒なことだ。この辺りでは空き巣は頻繁に起こる。明日はわが身かもしれない。だまされる悔しさよりは、これが本当であって彼を助けなかったとしたらどんなに良心が痛むことだろうかということのほうが、わたしにとっては重要だった。ちょうどの金がなかったので5000ペセタを貸してやったが、(返してもらえるのなら4600ペセタも5000ペセタも同じである。)もちろんフランクは翌日現れなかった。フランクの両親の家だと言う、隣りの住宅地の26番地を見に行ったが、そこはまだ建設中であった。 わたしたちの事件から1ヵ月後、「コスタ・ブランカ・ニュース」の投書欄にフランクの話が載った。差出人の住所はうちから5キロほど離れた町である。手口はまったく同じであった。人相書も同一人物と思える。この人もスペインに引っ越して来てわずか2ヶ月しか経っていないと言う。 先に掲げたカルタヘナ在住の男性の手紙によれば、このフランク、最近はうちから50キロほど離れた場所で営業中ということになる。1年間で50キロの移動だ。その間にいくら儲けたのかはわからないが、女性の相棒までできたところを見ると、まずまずの収入はあったようだ。カモはイギリス人が多いようである。同じ手紙によると、フランクは前庭に停まっている車のナンバープレートをまずチェックするそうだ。イギリスナンバーを確認してから、玄関チャイムを鳴らす。 誰がつけたか知らないけれど、この詐欺師には「フェア・ディール・フランク」というあだ名がついている。北スペインまでのガソリン代をきちんと割り出してそれ以上の金はだまし取らない、フェアであるというのがその名の由来らしい。しかし、説得力のある金額でなければひっかかる人はいないので、妥当な金額であるのは当然である。それを詐欺師にしてはフェアであると感心するイギリス人もおめでたいものだ。もっとも、イギリス人というニッチマーケットに特化しているフランクのことだから、フェアプレーを尊ぶイギリス人気質というのも、すでに彼の戦略に含まれているのかもしれない。 ★ ちょっと関係ないけれど・・・(編集後記) ペドロランドのすぐ近くで、「コスタ・ブランカ・ニュース」の一面で最近取り上げられた事件が起きた。見出しは「イギリス人ヒーロー、子供を死から救う」である。 スペイン人の女の子が横断歩道を渡ろうとしていたところ、このために停まっていた車の後続車がスピードを落とさずに突っ込んできた。これを見て、とっさにイギリス人男性が少女に駆けより、彼女を押しのけた。ところが、後続車はそのまま停まっていた車に衝突し、この車ははずみで前に動いたため、少女とイギリス人男性にぶつかった。停まっていた車に後ろから突っ込んだ車はそのまま逃走した。スペイン人少女、イギリス人男性、歩道で停まっていた車の運転手の3人は病院に運ばれたが、命に別状はなかった。イギリス人男性のとっさの判断がなければ、少女の命はなかったかもしれない。当て逃げ犯人の乗ったベルギーナンバーの車に対する情報をお持ちの方は、近くの警察かコスタ・ブランカ・ニュースまでご一報を、というのがその記事である。 新聞よりも早い夫の情報によれば、この当て逃げ犯人はすでに捕まったそうだ。車はベルギーナンバーだったが、犯人はスウェーデン人男性であった。この男性、ペドロランドのすぐ近くに住んでいて、近所の人の通告で警察が来たときには、事後処理を奥さんに押し付けて(とんでもない奴である。)すでにスウェーデンに高飛びしていた。が、結局、観念してお縄を頂戴するべく、スウェーデンから戻ってきたそうである。 スペイン人犠牲者にイギリス人の英雄。ベルギーナンバーの当て逃げ車にスウェーデン人の犯人。ペドロランドの周りでは国際的ドラマが常に繰り広げられている。 |