| 第23号 (4月20日発行) |
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★ スペイン人の名前 当メルマガの姉妹誌である"Anglo-bites"(イギリスつまみ食い)で、最近イギリス人の名前について取り上げたので、こちらでも名前の話を。 まず、最初に『イギリスつまみ食い』同様、統計から紹介すると、2005年にスペインで生まれた新生児の名前として一番多かったのは、男の子では、下記の通り(Wikipediaの"Most popular names"による)。Alejandro、Daniel、Pablo、David、Javier、Adria'n、A'lvaro、Sergio、Carlos、Hugo。女の子の名前は、Luci'aが第1位で、Mari'a、Paula、Laura、Marta、Andrea、Alba、Sara、Claudia、Ana。ただし、これはバスク地方とカタルニアを除くという注意書きが付いている。これらの地域は言語も異なるなら、名前でも全く別の世界のようである。とはいえ、カタルニアの女の子の名前トップテンには、上記と重なるものも少なくない。 女の子の名前を見ると、見事に全部aで終わるものばかり。かつてわたしがアメリカに短期留学していたとき、同じクラスにケイカとケイコという日本女性がいた。彼女たちの名前を見てグァテマラ人の女の子が、ケイコは男性形で、ケイカは女性形ではないのかと聞いてきたのだが、同じ語源を持つ名前がoで終わると男の子の名前、aで終わると女の子の名前というパターンが通常のスペイン語圏の人にしてみたら、ケイコもケイカも女性なのは不思議に思えるかもしれない。 もっとも、スペイン語の名前の中にも、oで終わり、普通名詞としては男性形の言葉なのに、女の子の名前であるというものがある。Rosario、Soccoro、Remidios、Roci'oなどがその例だ。これらはすべて聖母マリアに関連した名前で、その前につくMaria、Virgen、Nuestra Sen~ora del (de los)などが省略された形で、それぞれ、ロザリオの、救済の、癒しの、露のマリアという意味だそうである。 このように、女性の名前には、聖母マリアを表すものが非常に多い。Pilarというのもよく耳にする女性の名前だが、これは柱を意味し、もともとは柱のマリアということだ。スペインのサラゴサで伝道をしていた十二使徒ヤコブのもとに、聖母マリアが柱の上に現れたという伝説に基づくそうである。また、Doloresは英語圏でもよく耳にする名前であるが、スペイン語で悲しみ・痛みを表し、これも悲しみのマリアと聖母マリアに由来する。車で有名なMercedesもこの一例で、もともと慈悲のマリアを表す。そのほか、聖母マリアが出現したという伝説のあるバスク地方の土地の名前が女の子の名前になっている例もある。 昨年デービッド・ベッカム夫妻に第3児が誕生したが、その名前をCruzと言う。夫妻によると、スペインでの生活を記念して、スペイン語の名前をつけたそうだ。その前にデービッドの不倫が新聞沙汰となり(本人は一貫して否定を続けたが)、自分のキャリアを大切に思うばかりに、夫をスペインに単身赴任させているヴィクトリアが悪いと世間の非難が高まったことがある(自分が不倫をして妻のほうが責められるなんて男性諸氏にはうらやましいことでしょう)。この結果、夫人は子供をつれて一家でスペインに移ったのだが、この命名は「わたしたち家族はスペインでの生活になじんで仲良くやっているのよ」ということを誇示する意味もあったのではないかと思う。それはともかく、ベッカム家の三男につけられた名前、Cruzはスペインでは女の子の名前である。これも、やはり、聖母マリアを表す名前で、十字架のマリアを意味する。イギリスではクルーズと発音されているが(スペイン語ではクルス)、cruise(英語で船旅を意味する)と解釈して、第1子のブルックリン同様、この子も身ごもった場所にちなん名前をつけられたのかと勘違いしたイギリス人も少なくないのではないだろうか。毎回子供の名前で世間をにぎわしているベッカム夫妻である。 女の子の名前には、そのほかにもAnunciacio'n(受胎告知)、Ascensi'on(キリストの昇天)、Asunci'on(聖母マリアの被昇天)、Purificaci'on(聖母マリアの清め)などキリスト教の行事に関連した名前が多い。それぞれの祝日に生まれたということなのだろうか?同様に、処女懐胎に由来するInmaculada(けがれのない)もよく聞く女の子の名前だが、こんな名前をつけられたら、若い女の子にとってはちょっと恥ずかしいのではないだろうかと心配になる。いずれにせよ、長くて呼ぶのがたいへんではないかと思うのだが、Inma、Puriなどと縮めた愛称で呼ばれることが多いようだ。 女の子の名前に聖母マリア関係のものが多い一方、男の子の名前にはJesu's(ヘスース)というのがある。綴りでおわかりのとおり、イエス・キリストにちなんだ名前である。普通だと、教祖様の名前を子供につけるのは畏れ多いのではないかと感じると思うのだが、スペイン人は感覚が異なるようだ。イギリスでくしゃみをすると、"Bless you!"(神様のご加護がありますように)という言葉が飛んでくるのだが、スペインでは「ヘスース!」と言うらしい。また、イギリスで「ジーザス!」と言うと、驚きを、特に「そりゃひどい!」というような悲惨なことに対する驚きを表すが、スペインでもやはり、驚き・悲しみ・嘆きを表す感嘆詞となっているということである。この名前もとてもよく見かけるが、誰かがくしゃみをしたり、驚いたりするたびに名前を呼ばれるのは、迷惑なのではないだろうか。 このほか、スペイン人の名前の多くはキリスト教の聖人の名前に由来する。こうした名前の多くはキリスト教圏で共通し、そのせいか、スペイン人は外国人の名前でもスペイン風に翻訳してしまうことが多い。イアンというイギリス人の男性はスペインでホアンと呼ばれているが、これなどはなかなか手の込んだ翻訳だ。イアンはもともとはジョンのスコットランド形で、キリスト教の聖人・ヨハネに基づき、スペイン語でこれに当たるのが、ホアンということになる。 日本でもおなじみのウォルト・ディズニーの創作ミッキー・マウスはスペインでは、"Miguel Ratoncito"、中南米では"El Raton Miguelito"と呼ばれているとか。英語のミッキーはマイケルの愛称で、マイケルはスペイン語ではミゲルとなる。 以前、スペイン語の新聞の第1面にイギリスのハリー王子の写真が載っているのを見かけたことがある。見出しに示された彼の名前はEnrique。「ギョーテとは俺のことかとゲーテ言い」という川柳があるが、ハリー王子も自分がスペインではエンリケと呼ばれていることを知ったら、不思議な気持ちになるかもしれない。ハリーはもともとはヘンリーあるいはハロルドの愛称で(『イギリスつまみ食い』でも取り上げたが、最近は正式な名前となっている)、スペイン語でヘンリーに当たるのがエンリケというわけだ。 ちなみに、英語で、南欧系(ポルトガル・スペイン・イタリアなどを主にさすが、ときにアラブ人なども含むことがある。要するに色の浅黒い怪しげな外国人ということだろう)の男性を軽蔑して呼ぶ差別用語に、デーゴ(dego)という言葉がある。これは、スペイン人の名前、ディエーゴ(Diego)から来ている。イギリスでまだ外国人が珍しかった当時、うさん臭そうな外国人というと、ディエーゴという名前が多かったのかもしれない。上記のトップテンには入っていないが、今でもこの名前は人気がある。我が家の裏に住むスペイン人夫婦の3歳になる孫もこの名前だ。 ★ ちょっと関係ないけれど… 4月10日にペドロランドの年次住民総会があった。復活祭の前後にはスペインにやって来るパートタイム住民も多くなることから、毎年この時期に年次総会が行われることになっている。昨年度決算の報告と今年度予算の承認という恒例の議題があったのだが、住民管理組合会長と管理会社社長との間の個人的な応酬に時間を割かれて、結局3時間かけても議題を消化できなかった。なにしろ、1つの発言を英語・ドイツ語・スペイン語に通訳するわけだから、普通の3倍時間がかかるわけだ。もともと英語で行われた発言がスペイン語とドイツ語に翻訳されているうちにすっかり混乱してしまって、今の発言を英語に翻訳してくれと言い出すイギリス人住民まであった。 3年前に、前会長と前の管理会社を解任するために(汚職があったという噂である)、現会長が新しい管理会社を見つけてきて一緒に政権についたわけなのだが、最近は2人の仲に亀裂が目立ってきた。こうなると、仲たがいして別れた夫婦のようなもので、余計に始末が悪い。「あの時はわたしが世界で一番きれいだって言ったのに」、「いや、俺はそんなことは言わなかった」というたぐいの世界である。挙句の果てには、「結婚届(契約書)にはサインしなかった、おまえがどこかから勝手に俺の署名を切り抜いてきて、書類に貼り付けたのだろう」という発言まで飛び出した。こんなやりとりに3時間も付き合わされたのだから、午後8時半に集会が終わったときには、住民はみなうんざり顔である。結局、2〜3週間後に再び総会を招集するということになったのだが、果たして今度は何人の住民が集まることか。 では、次号でお会いしましょう。 |