不思議のペドロランド

第22号 (2月28日発行)

★ シエスタとスペイン人

また6ヶ月もご無沙汰してしまいました。たいへん申し訳ありません。でも、まったくさぼっていたわけではないのですよ。昨年2月から「ペドロランド日記」というブログを始めたのですが、そちらのほうで、日々のペドロランドの出来事をもうちょっと頻繁に綴っております。言い訳は後にして、早速今回のテーマ(まぐまぐさんの督促に迫られて発行したにもかかわらず、今回には一応テーマがあります!)に取りかかりましょう。

12月にイギリスの新聞でスペインに関する短い記事をみつけた。欧州連合がスペインに対して、シエスタの習慣を改めるよう要請したというものである。スペインだけ、午後の真っ最中に長い昼休みを取っているのでは、国際的な業務の連携に支障を来たすというわけである。

スペインでのシエスタの習慣はよく知られているが、ペドロランド近辺でも、きちんと実行されている。ただし、スーパーマーケットだけは例外で、朝9時から夜9時まで1日中休まず営業のところが多い。普通の店は9時に開店して午後2時まで営業、午後4時あるいは5時に再度開店して、午後7時あるいは8時まで営業というパターンである。

これでは午前中が長すぎるのではないかと心配される方、どうぞご心配なく。市役所に行くと、10時半〜11時まで休業という張り紙があったりする。しっかり業務を停止してコーヒーブレークというわけである。

午後2時になると店を閉めて、一斉に人々が家への帰途に着く。そして、家族でテーブルを囲んで、にぎやかに食事をとり、その後、昼寝をして、また夕方の仕事に戻る。仕事が終わると、再び家に戻って食事を取り、夜10時・11時からバーやクラブ(ディスコ)に出かけて、朝帰りをし、翌朝また仕事に出かけるわけである。8時間睡眠が必須のわたしには、このようなスペイン人の生活はのんびりしているようで、かなりタフなように思える。このような典型的なスペインの生活を実際にしているのは、若い人だけなのかもしれない。しかも、毎晩出かけるわけでもないだろうと思う。

が、このような生活を可能にしているのは、職住近接という環境に違いない。マドリードなどの大都市ではかなり通勤圏が広がっていると思うのだが、同じようなことをしているのか、わたしとしては疑問である。

シエスタの習慣に慣れていない外国人には不便なこともある。正午過ぎに昼食をとっていざ出かけみると、店が閉まっていてがっかりしたりする。かく言うわたしも、つい最近、イギリスから帰ったばかりで、うっかり午後の休業を忘れていて、2時少し過ぎに家具屋に行ってみたら、ちょうど閉まるところだったということがあった。その反面、よいのは、この時間帯にスーパーに行くと、店内はがらがらで、レジに行列することもめったにないことだ。

住宅建設が最大の産業となっているペドロランド近辺では、建設現場で働く、移民やスペインのほかの地域から出稼ぎに来ている単身生活者も多く見られる。こういう人たちを見ていると、昼食に家に帰ることはないようで、バーで安い日替わり定食を食べたり、簡単な弁当を作業場に持って来ているようである。そして、食事が済むと、本当に昼寝をするのだ。

まだペドロランドの大半が建設現場であった頃(我が家はすでに完成していた)、ある日の昼下がり、誰もいないはずのお隣から物音が聞こえてきた。不審に思ってのぞいてみると、お隣の玄関ポーチに、段ボール紙を敷いた上に男性が2人横たわっていて、高いびきをかいていたのである。シエスタタイムを満喫している建設作業員たちであった。道端で、日陰になった壁に背をもたれて、座った格好で昼寝をしている道路工事作業員を見たこともある。

実際夏の午後2時から4時は一番暑い盛りにあたる。とても野外で肉体労働などできたものではない。シエスタは単なる習慣ではなくて、健康には不可欠の休息であり、理屈にかなった制度なのである。ペドロランド近辺では、8月まるまる1ヶ月休業する建設会社も少なくない。これなどは、長いシエスタと言えるのではないか。

欧州連合の役人たちがシエスタをやめろと号令をかけるのは簡単であろう。が、シエスタは深くスペイン人の生活に根付いたもので、それなりの理由があるのだ。そうそう簡単にはなくならないだろうと思う。だいたい、フランス人だって、正午から午後2時まで、たっぷり2時間の昼休みを取る。昼食時になると、スープ・前菜・メインコース・デザートからなる日替わり定食をワインとともにゆっくりと楽しむ労働者でレストランはあふれかえる。これは、食べることを重要視するフランス人のこだわりでもある。国民の生活や価値観に裏付けられた習慣は、上からの強制によって簡単に廃止することはできない。

フランスの昼休みが食べることを中心としているように、スペイン人の生活パターンも食べることを中心に形成されている。スペイン人は1日に5食取ると言われるが、これは本当のようだ。最後の夕食は午後9時前後となり、これがスペイン人の宵っ張り傾向の原因となっている。

ペドロランド近辺のレストランに午後6時半頃に行くと、食事をしているのは、ドイツ人ばかりということが多い。スペイン人経営のレストランは、こんな時間には開いてすらいなくて、営業しているのはもっぱら中華料理店や外国人相手のレストランである。8時前後から、イギリス人の姿が増え、9時過ぎにスペイン人の食事客が現れるというわけである。

3度の食事をそれほど重要視しないイギリスでは、昼食は机でサンドイッチを頬張りながら、仕事という人も少なくない。また、パートタイムの人たちの中には、職場で昼休みを取るよりは、ぶっ通しで働いて、その分早く家に帰りたいという人たちもよく見られる。これも、根本にあるのは、スペイン人と同じ、なるべく多くの時間を家族と過ごしたいという考えである。ただ、イギリスには、昼に家族みんなが集まって食事をするという習慣がないので、長い昼休みにならないだけである。子供たちは学校給食や家から弁当を持っていくので、親が昼に家に帰っても意味がない。親のほうも、イギリスでは職住が離れていることが多いので、昼に家に帰るのは時間の無駄が多いというわけだ。

国によって、生活や習慣は異なる。だからこそ各国の特色があり、外国旅行の楽しみもあるわけだ。人と金の自由な行き来という欧州連合の理念は結構だが、加盟国すべての生活や習慣が同じになってしまったら、これほどつまらないことはない。

★ ちょっと関係ないけれど…

さて、6ヶ月ぶりの発行になってしまいました。その6ヶ月の間には個人的にいろいろなことがありましたが、詳しいことは、その折々ブログに書き綴っていますので、ぜひご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/michie-flamingo/

このブログにも書いたが、今年の1月1日より新しい喫煙法がスペインで施行された。1千平米以上のレストラン・バーは、喫煙席と禁煙席とをはっきりと区別しなくてはならず、喫煙席には空調装置を設置しないといけない。それ以下のレストランやバーは、それぞれ独自に喫煙を許可するかしないかを選択することができる。これによって、小さなレストランの中には禁煙とするところが多く出てくるのではないかと政府は目論んでいたのだが、蓋を開けてみると99パーセントの小さなレストラン・バーが喫煙を許可するという結果となった。つまり、今までとはあまり変わらないというわけである。原因は、禁煙とすることで、客が減ることをレストランやバーの経営主が恐れたためである。

タバコ離れを促すもう1つの手段として、タバコ税の値上げも試みた政府だが、国庫を潤すことにはなったものの、タバコ会社が軒並みタバコの値段を下げるという対抗策をとったため、タバコ税値上げの影響はほとんど感じられず、タバコの売上はかえって増加した。

スペイン政府は、さらに厳しい喫煙法を施行するべく現在検討中ということである。つい最近イギリスの国会でも、来年7月から公共の場所での喫煙を禁止する法案が可決されたばかりである。すでにアイルランドでは同様の法律が昨年3月から施行されており、スコットランドでは来月から実行される。これらの国の禁煙法は、職場での間接喫煙を防ぐという被雇用者保護の立場に基づいている。イギリスでも当初は、メンバー制のクラブでは喫煙を許可するとか、パブでも食事を出さない部分では喫煙を許可するといったように、一部の禁煙を許可する方向が予想されていた。が、結局全面禁煙になったのは、働く人たちの健康というそもそもの視点に目が向けられたためであろう。スペインの喫煙法も、同じ観点に重点が置かれれば、レストランやバーの経営者に選択を任せる方向には行かず、当然全面禁止となったはずである。さて、スペイン政府は、今度はどんな法律を打ち出してくるだろうか。

さて、今年は、イギリス・スペイン・フランスの3拠点体制となり、かなり移動に忙しくなることが予想されますが、どこからの発信になるにせよ、「不思議のペドロランド」は続けていきたいと思っています。よろしくお付き合いのほどをお願いいたします。

では、次号でお会いしましょう。


[トップページに戻る] [前のページへ] [次のページへ] [メールを送る]