| 第2号 (5月11日発行) |
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★ コスタブランカのイギリス人たち 今回はペドロランドのイギリス人住民をご紹介するわけですが、ここでは少し幅を広げて、コスタブランカ地方に住むイギリス人全般について書きます。 コスタブランカに住むイギリス人は、大きく分けて下記の二つのタイプに分類できる。 第一のグループは、「一番いいのはイギリスの天気がよくなること、二番目によいのは、イギリス人がみなスペインに引っ越してくること」という人たちである。どちらもかなわないので、とりあえず自分が引っ越してきた。こういう人たちは、イギリス人の多い地区に住み、夜はイギリス人(あるいはアイルランド人)の経営するイギリス式パブで飲み、日曜日にはイギリス人経営のレストランでロースト・ビーフをいただく。 もう一つのタイプは、こうしたイギリス人を苦々しく思い(特に彼らがスペイン語を話せないということを機会があれば指摘したがる。)、スペイン文化をこよなく愛し、自分はスペイン人社会にすっかり溶け込んでいると思っている人たちである。こういう人たちは、フィンカと呼ばれる田舎の農家を改造した家に住み、500メートルくらい離れた隣りのスペイン人と家族ぐるみで仲良く行き来している。スペイン人の友達がいるというのが彼らの一番の自慢だ。でも本音を言えば、たまには思い切り英語でおしゃべりがしたい。 どちらもスペインに来た第一の理由は同じである。温暖な気候。太陽輝く毎日。そして、二つ目の理由もたぶん同じである。物価の安さ。イギリス政府から支給される年金だけでも生活ができる。第一のグループに三つ目の理由は無い。第二のタイプは、第三番目の理由はスペイン人のゆったりしたライフスタイルであると言うであろう。 第一のグループは保守的思想の持ち主が多い。移民に侵略されつつある母国イギリスを嘆いている。英語も話せず、また習おうともせず、大量に移住してきては自国の文化をそのままイギリスに持ち込む。イギリス本来の伝統も文化も尊重しようとはしない。イギリスの魅力は経済的繁栄だけであり、移住の目的はその繁栄の恩恵に与ることである。こういった昨今のアジアや東ヨーロッパ圏からの移民が大嫌いだ。ところが、「英語」を「スペイン語」に置き換え、「イギリス文化」を「スペイン文化」に置き換え、「経済的繁栄」を「温暖な気候」に置き換えると、それがそのまま自分たちに当てはまることにこの人たちは気が付いていない。もっとも、彼らに言わせれば、こうしたイギリスへの移民たちはイギリスの手厚い福祉制度が目当てで、イギリスからは甘い汁を吸い取るだけだが、自分たちは母国で稼いだ金をスペで使い、地元の経済に貢献しているという点が大きな違いということになる。 コスタブランカのイギリス人住民の平均年齢は65歳くらいと思われる。年金生活者が多い。ただし、この年齢は徐々に低下している。イギリスでは会社の合意さえあれば、会社の年金を50歳から支給し始めてもらえる。社員の若返り=人件費削減をもくろむ企業としては、早期退職を勧めるところが多くなっている。特に多いのが、警察官。身体の不調を理由に50代で引退する人が増えている。この場合も50歳から恩給が支給されることになる。現在のイギリスでは、教師及び看護婦と並んで、警察官は最もやりにくい職業になっているため、この類の人は後を絶たない。 また、もっと若い人たちの移住も増えてきた。ここには、観光を中心とするサービス業と建設業・不動産業くらいしか産業がなかった。ところが、イギリス人が大量に移住してくるに従って、イギリス人を対象としたビジネスが成り立つようになってきた。そうなると、まだ悠悠自適の引退生活ができる年齢に達していない人たちでも、働いて生活ができるようになる。 住民の平均年齢が高いこともあって、ここには古きよきイギリスがある。4月23日は、セント・ジョージズ・デーであった。イングランドの守護聖人の祝日であり、イギリス人(イングランド人)であることを誇る日である。この日は、コスタ・ブランカ地方各地でパーティーが催され、多くのイングランド人がイングランド人であることを謳歌した。ところが、イギリス本国では、この日をおおっぴらに祝うことがはばかられている。セント・アンドリューズ・デー(スコットランドの守護聖人の祝日)、セント・デイビッズ・デー(ウェールズの守護聖人の祝日)、セント・パトリックス・デー(アイルランドの守護聖人の祝日)を祝うのは大いによろしい。が、セント・ジョージズ・デーを祝うのは、ポリティカリーにコレクトではない。多数民族の悲劇といえよう。少数民族の権利ばかりが尊重された結果として、多数民族はかなり肩身の狭い思いをしている。敗戦後の日本に育ち、戦争の加害者としての罪ばかりを教え込まれてきたわたしとしては、自分の国を堂々と誇れないことには同情するばかりである。 すでに、6月初めのエリザベス女王即位50周年に向けて、社交クラブやバー・パブなどでは、記念パーティーが計画されている。ユニオン・ジャックを振りながら、威風堂々を歌うというシーンがコスタブランカ各地で見られることであろう。 コスタブランカのイギリス人の間ではイギリス憂国論が盛んである。まず、前述した移民の問題。移民に対する福祉制度があまりにも手厚いために、イギリスに移住を希望する人たちが後を絶たない。ユーロ・トンネルのフランス側入り口近辺には、隙があればイギリスに潜り込もうという不法移民がごまんとキャンプを張っている。違法・合法あわせて移民の数は急増している。孫の代にはイギリスはヨーロッパ最初のイスラム教国になっているだろうというのが最近広まっている予言である。 次にインフラの崩壊。鉄道に関しては、遅延は日常茶飯事、大きな鉄道事故もよく起こる。(この原稿を書き始めたのは二日前なのですが、配信手続き直前にハートフォードシャーで6人が亡くなるという鉄道事故のニュースが入り、あまりの偶然に怖いような気がしています。)世界に先駆けて確立した自慢の郵便制度は、郵便局(大金を費やして、コンシグニアなどというわけのわからない名称にイメージチェンジしたのはつい昨年のことである)が大幅人員削減を発表し、そのサービスの低下が心配されている。 教育については、さらに嘆かわしい状況となっている。家庭のしつけがなっていないために授業に臨む態度ができていない。成績以前の問題である。そして、医療制度。手術待ち18ヶ月なんていうのは当たり前。病院の急患受付では医師に診てもらうのは一日仕事だ。 さらに、犯罪の増加。犯罪人の人権を重視するばかりに刑罰制度は骨抜き状態である。したがって、警察官の士気も低下する一方だ。教育の問題ともあいまって青少年の犯罪は目だって増えてきている。 コスタブランカのイギリス人の嘆きは下り坂を転げ行くイギリスだけにとどまらない。地元の英字新聞「コスタ・ブランカ・ニュース」の最近の一面記事見出しは、「スペインの犯罪首都・トーレビエッハ」であった。トーレビエッハはペドロランドに最も近い大きめの街であるが、ここは人口当たり犯罪数がマドリッドを抜いて全国一だというということである。その前の週の一面記事は、危険な種類の犬が野放し状態になっていて、当局はそれを取り締まるすべがないというものだった。読者投稿欄も毎週、スペインのインフラに対する苦情で一杯である。スペインに引っ越して3ヶ月経つがまだ一通も郵便の配達がない。(ペドロランドでは郵便配達が始まって15ヶ月が経つが、一週間に一度郵便配達があればいいほうである。イースターや夏休みの時期になると、郵便の配達が4週間もないということも珍しくない。)スペインに引っ越して2年経つがいまだに電話が入らない。(ペドロランドに電話が入ったのは今年の3月のことである。わたしたちが最初の電話申し込みをしてから、実に1年半後であった。)私はこうしてスーパーの駐車場でハンドバッグを盗まれた。(ペドロランドにも犯罪はある。これは後ほど一号を費やしてご紹介する予定。)などなど・・・。もっとも、読むほうも他人の不幸や苦労は中東危機などよりよっぽどおもしろい。特に自分も同じ苦労を強いられているときには喜びもひときわである。 オーストラリア人はイギリス人を「ウィンジング・ポム」と呼ぶ。愚痴が多いということだ。あるイギリスのボート雑誌の読者投稿欄にただ一言「すべてに対して苦情を申し立たせていただきたい。」という文章が載ったことがある。オランダ人からの投書であった。これもイギリス人の小言が多いことを茶化したものだろう。イギリス人の愚痴り癖は世界的に有名なようだ。しかし、小言を言うのがイギリス人のストレス解消法なら、罪のないものと許してあげたい気がする。 ★ ちょっと関係ないけど・・・(編集後記) 本文自体がとりとめのない文章なので、果たしてさらに別のコラムが必要なのかどうかは疑問なのですが、編集後記が好きなわたしにはやっぱりこれなしではメルマガを終えることはできないのでした。第一号はあとがき抜きで発行しましたが、やっぱりなんとなく座りが悪い。 「ドリームチーム」が終わってしまった。アンディ・グレイ、ジョン・グレゴリーなどサッカー関係者が実名で登場するというので、うちの亭主は楽しんで見ていたが、その実は、彼の軽蔑するソープオペラ「イーストエンダース」と全く変わらないことにわたしは気がついている。登場人物に共感できる人間が一人もいない。幸せな人間が一人もいない、という点ではどちらも全く同じである。最終回は、折から一週間ほど我が家を訪れていた夫の弟が加わって、一緒に観ることになった。ライバルエージェントの滞在するホテルの部屋に録音テープを盗みに入った妊娠7ヶ月の女性に対して、「おなかが大きいわりには、やけに身軽じゃないの。ベッドの下に隠れるなんて。」とみんなでつっこみを入れるなど、思いがけずに楽しいテレビ観賞となった。昔、勤めていた会社のスタッフルームと呼ばれる部屋で、お弁当を食べながら「ライオン奥様劇場」を同僚と一緒に見ていた頃を思い出してしまった。 今シリーズ最終回は、プレミアシップ・チームであるハーチェスター・ユナイテッドの選手を乗せたバスが高速道路から転落、炎上するシーンで終わった。次のシリーズは配役全取替えかとわたしは思ったのだが、夫いわく、残したい俳優は残して、そうでない俳優は殺すんじゃない?ということだ。鋭い読みである。忙しくなって次シリーズには出演できない俳優なんかもきっと殺されてしまうんだろうな。次回予告によると、ハーチェスターの試合は一分間の黙祷で始まるようである。さて、誰が死んで誰が残るのか。うちの夫は、意地悪でわがままなオーナーの娘が死んでいることを祈っている。 |