| 第15号 (4月19日発行) |
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★ 11-Mの波紋 前号で「祭りにかけるスペイン人の意気込みは強い」と書いたら、実はバレンシアの火祭りの行事が一部中止されていたことがわかった。3月11日のマドリードでの爆弾テロがその原因である。200人近くの人が亡くなって祭りという気分にならないのもわかるが、スペイン人が祭りを中止するとは意外であった。中止というのは今年が火祭り史上初めてだそうだ。もっとも、テロ直後に予定されていた行事が中止されただけで、その翌週に予定されていたメインの行事は行われたらしい。不発に終わった花火を集めて自家製花火を作った子供たちが、その花火が爆発してやけどを負ったというニュースも伝えられている。アリカンテ市で6月に行われるオグエラという祭りのための女王選びも1週間延期になったものの、例年通り行われたようだ。やはりスペイン人から祭りを止められるものはないらしい。 マドリードのテロ直後に心配してすぐにメールをくださったTAKEちゃん、ありがとうございました。ペドロランドはマドリードから400キロほど離れているので、全然影響はありませんでした。 テロ直後は全世界の同情を集めたスペインであるが、選挙の結果、イラクからのスペイン軍撤退を公約とした社会労働党が勝ったことがわかると、今度はアメリカ・イギリス両国民から「テロに屈した弱虫」と批判を浴びることになる。もし同じようなことがイギリスで起こったら、ただひたすらテロになど負けるものかという国民の一念だけで、主戦派の党が勝っていただろう。これで反戦派が勝ったりでもすると、それこそテロリストの思う壺である。ところが、スペインでは「テロはいや」という感情のほうが勝った。ペドロランド近くの町でも総選挙に伴い国民党から社会労働党に町議会の主導権が移ったが、国民党所属のスペイン人町長は「スペイン人は頭でなくて、感情で投票した」と言ったそうだ。 もっとも原因は与党・国民党の判断ミスにもある。明らかにこれまでのバスク武装組織の手口とは異なるにもかかわらず、ぎりぎりまでETA犯人説に固執した。たぶん、アルカイダが犯人ということになると自分たちの党に分が悪いとわかっていたのであろう。これが裏目に出て、国民党は事実の隠ぺい工作をしているという印象を国民に与えることになる。そこを利用して野党・社会労働党は、国民党の党本部に群集が押しかけるようデモを組織した。こうしたマイナスの宣伝効果が働いて、国民党は政権を譲ることになった。 こうした惨事が突然起こると国民が一種の集団ヒステリー状況に陥るのも理解に難くない。イギリス人は比較的冷静な国民だと思うが、それでもダイアナ妃がパリで交通事故死を遂げた直後は、イギリスは一種の集団ヒステリー状態であった。ダイアナはマスコミや世論を巧みに操る悪賢い女と昨日まで言っていたジャーナリストたちが手のひらを返したように、ダイアナを天使のようにほめたたえる。ダイアナをけなすものは人にあらずという雰囲気であった。まあ、集団ヒステリーがこの程度のことで終わってよかったようなものである。「第3帝国の興隆」なんてことで国民が集団ヒステリーに陥ってしまうとそれこそ恐ろしいことになる。 マドリードの爆弾テロの犠牲者には外国人も含まれているが、驚いたのは不法移民に対するスペイン政府の措置である。テロで亡くなった不法移民の遺族にはスペインでの永住権を与えると発表した。法律を犯してその国に滞在している者にまで政府は責任を負わなければならないのか。テロで亡くなったのは気の毒だが、本来ならスペインに滞在していてはいけないはずの人々である。温情を表す政府のジェスチャーなのだろうが、あまりの不合理さにあきれてしまった。もっと驚いたのは、この政府の申し出に応じて永住権を申請した外国人が500人以上もいたことである。テロで亡くなった外国人犠牲者は47人だったそうだ。さて、ここから本物の犠牲者遺族とちゃっかり便乗派とを分別しないといけないわけだが、もしこの政府措置が単なるジェスチャーだとしたら、ずいぶんと手間と人件費のかかるジェスチャーになったわけである。 聖週間(復活祭)の休暇をすごす人々で人口の急増したペドロランドを離れ、現在イギリスに来ている。次のテロの標的はロンドンとも言われる。今でこそアイルランド共和国軍(IRA)のテロ活動が収まっているものの、かつてはテロが怖くてはイギリスでは生きていけないほどであった。5年くらい前まではロンドン市内ではゴミ箱をまったく見かけなかった。ゴミ箱は爆弾の格好の隠し場所になるからである。ゴミ箱が街に現れ始めて、ああ平和な時代になったのだなと実感したものだ。また、スペインにはアルカイダという新しい脅威がなくても、ETAという旧来のテロ集団が存在する。3年前の夏の観光シーズンには海辺のリゾート地が次々と標的となり、ペドロランド近くの町でも爆弾テロがあった。イギリスもスペインもテロがあってたいへんですねと言われる。でも、日本を離れて以来、少なくとも地震の夢だけは見なくなった。どこに住んでいても災難は起こるときには起こる。人間にできることは、悔いのないように毎日を生きることだけだ。 ★ ちょっと関係ないけれど・・・ 前号のこの欄で引ったくりの話をしたが、ついにペドロランド近隣でも殺人事件が起きてしまった。 ペドロランドのすぐ隣に、大雨が降ると川となって流れる谷のようなくぼ地があるのだが、2週間ほど前にここで14歳の少女の死体が見つかった。乱暴された上、首を絞められて殺されたらしい。被害者はノルウェー人だそうだ。皮膚病にいい気候ということで、昨年末にペドロランド近隣に一家で引っ越してきたばかりらしい。最有力容疑者は14歳の同級生ということである。人口が増えると犯罪も増えるのは残念なことだ。 今回はなんだか暗い話題ばかりになってしまいました。そうそう、地震と言えば、実はペドロランド近辺でも地震はある。19世紀の終わりにはペドロランド近くの町が全壊するほどの大地震もあった。わたしが引っ越してきてからは、体感できた地震は去年に2回あっただけである。このとき地震を知らないイギリス人たちはみな驚いて家から出てきた。これは地震であると教えるといたく感動していた。 それでは、また次号でお会いしましょう。 |