| 第13号 (2月29日発行) |
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★ お墓の話 姉妹誌の"Anglo-bites"(イギリスつまみ食い)の読者のTさんからイギリスのお葬式について書いてくださいというリクエストをいただいてから久しいが、まだお約束を果たしていない。同誌では結婚・離婚・クリスニングと冠婚葬祭のうち葬式以外はほぼカバーしたが、まだこの話題だけは扱っていない。幸いなことにイギリスではまだ葬式に参列する機会に恵まれていないからだ。しかし、そのTさんのご質問にも一部答えられそうなので、そろそろ少しずつでも書いていきたいと思う。(Tさんはこの「不思議のペドロランド」の読者でもいらっしゃる。) Tさんのご質問の1つは「イギリスには決まった墓参りの日がありますか?」ということであった。日本のお盆やお彼岸などのような特に決まった墓参りの時期はイギリスにはない。故人の誕生日・命日、何か故人に報告をしたいことがあったときなど、墓を訪れる人の気の向いたときということになる。その点、スペインは日本に似ていて、全国的に墓参りをする日というのがある。それは11月1日である。この日はカトリックの暦で「すべての聖人の日」、万聖節という祭日にあたる。全国的な祝日で、学校も会社も休みになる。364日すべての日が一人一人(1日に2〜3人の日もある)の聖人の日に当てられているが、この日はそこからもれてしまった聖人をまとめて全員をお祝いしようという日である。それがスペインでは故人をしのぶ日となっている。 10月末になると、ふだんは生花など置かないスーパーマーケットにも突然花束が現れる。日本では菊を中心に仏様用の花というのがあるが、スペインやイギリスには特に墓に供える花というのはないようである。色とりどりの花が墓地を飾る。もっとも、イギリスでは白百合が特に死者を象徴する花とされていて、葬式ではこの花がよく使われる。お悔やみのカードにも白百合をあしらったものが多い。余談だが、12月にオーストラリアを訪れた友達がシドニーの郊外に墓参に出かけた。ここの墓地では生花を供えるのは禁止されているそうだ。暑さで花が腐敗してハエなどの望ましくない昆虫が集まってくるからという理由らしい。そこで、墓参りに来る人たちは、シルクフラワーのような造花を持参するそうである。こうなると燃えないゴミが増えて環境上よくないのではないかという心配が起こる。イギリスでも葬式に花を贈る人が多いが、献花されたい方はその志をを慈善団体に寄付してほしいと希望する人が最近増えている。あらかじめ自分の希望するチャリティー団体を決めておき、亡くなったときにその希望を家族から参列者に伝えてもらうわけである。数日で枯れてしまう生花や葬儀の日だけ飾られる花輪などに金をかけるよりは、他人の役に立つように金が使われるのはいいかもしれない。最近さらに合理的な人の話を聞いた。イギリス人の友人の知人なのだが、燃えてなくなってしまう棺おけに金を使うのはもったいないので、棺は紙でよいと遺言したそうだ。その言葉どおり、この人は段ボールでできた棺に納められたが、葬式に参列した友人の話によると、とてもよくできた棺おけでとても紙でできているとは思えないほどだったということである。 さて話は戻って、11月1日には墓地行きのシャトルバスが特別に運行されるほど、この日はスペインでは国民がこぞって墓参りに出かける。そうなるとバチ当たりな人間もいるもので、家族そろって墓地に出かけた留守を狙って空き巣に入ったという記事が新聞で見られたりする。墓参りが国民的行事になっているというのも、治安の面では問題があるかもしれない。 ペドロランドの近くにも墓地があるが、これはちょっと不思議なシロモノだ。立体駐車場ならぬ立体墓地である。1つ1つの建物は横4メートル・高さ2メートル・奥行き3メートルくらいの大きさで、壁は白塗り、黄色がかったオレンジの瓦屋根がついている。近辺の住宅と同じスタイルである。この建物の中に縦横・上下・左右に墓が並んでいる。コインロッカーを想像されたい。違うのは扉がみかげ石などの素材を使った、思い思いの墓標になっていることである。そして花受けがついているので、ここに花を供える。実のところ、わたしは墓地内に入ったことがないので、これが棺おけのカプセルホテルなのか、それとも骨壷のコインロッカーなのかはさだかではない。火葬場が同じ敷地内に併設されていることから考えるときっと灰の入った骨壷が納められているのだろう。地上に遺体を埋葬(?)するというのもちょっと考えにくい。 先日、イギリス人の隣人たちと火葬か土葬かの話になった。カトリックは土葬であるというのが、あるイギリス人の説であったが、ペドロランド近辺では火葬場が多く見られる。土地が貴重になってきた昨今、土葬は少なくなってきているのだろう。先日も地元の英字新聞を読んでいたら、ある地区では墓地を移すため、2年以内に現存の墓を掘り起こして遺体を移動するように地方自治体が遺族に訴えているという記事があった。この墓地の跡地には火葬場を建て、残りは住宅地にするらしい。建物の密集した町の中心地に火葬場を設けるのは環境的に問題があるのではないかという反対が出ているそうだ。 12月から1月にかけてイギリスに滞在したときにも似たような話がラジオで取り上げられていた。イギリスでは、一生を終えると地元の教会の庭に埋葬されるというのが伝統的であった。しかし、ここでもやはり土地が希少になっている。そこで、 現存の墓を掘り起こしてさらに深く埋め、その上に新しい棺おけを埋めようという案が出ているのだそうだ。スペインとはちょっと違って、地下の立体墓地というわけである。このラジオ番組では、特に教会の庭という場所にこだわらなくてもいいのではないかという観点から、いろいろな埋葬の場を議論していた。庭とか(引越したくなったら、ちょっと不都合だろう)森林とかの案が出ていた。実際に森林墓地というのがすでにあるそうで、墓碑は立てず、代わりに木を植えるのだそうだ。しかし、時代は確実に火葬に向かっている。同じ時期にイギリスの新聞で、「ダイヤモンドになったお父さん」という見出しで父親の遺灰からダイヤモンドを作った家族の話を見かけた。場所はとらないし、常に故人を思い出せるという点ではいいかもしれない。 ★ 最後に たいへんご無沙汰しましたが、なんとかまぐまぐの廃刊警告が来る前に発行することができました。前号を発行してから、もう少しで6ヶ月になるところであった。本当に時が経つのは早い。前号はイギリスから帰った直後の発行であったが、前述のようにその間にまたイギリスに行ってクリスマスと新年を過ごし、再びスペインに戻ってきている。4月にはまたイギリスに行く予定だ。トレーラーハウスという拠点ができたため帰りやすい状況になったこともあるが、それ以上にこのトレーラーハウスのある場所が実に美しいケント州の田舎にあることが、頻繁にイギリスに帰るようになった大きな理由である。4月のイギリスの田園風景を見るのが今から待ち遠しい。ただ一つ残念なのは、毎年4月に行われるペドロランドの住民総会に今年もまた出席できないことである。 それでは、また次号でお会いしましょう。 |