| 第10号 (2月11日発行) |
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★ スペインの落とし穴 年も改まり、このメールマガジンも創刊して9ヶ月になりましたが、このマガジンの姉妹誌・"Anglo-bites"(イギリスつまみ食い)から来て下さった読者のみなさんには、まだ果たしていないお約束があります。以前、「イギリスつまみ食い」の中で「イギリスで家を売る・買う〜住宅売買の落とし穴」という特集をしたことがありますが、その中で、「スペインでの住宅売買にはもっともっと大きな落とし穴があります。それについては、スペインでの生活に関する、新しいメールマガジンのほうでご紹介します」と書きました。が、いまだにこのお約束は果たしておらず、有言実行をモットーとするわたしとしては、今までたいへん心苦しい思いをしていました。というわけで、今年は真っ先に胸のつかえをおろすためにも、この話題で始めようと思います。ただし、このテーマの料理のしかたは、「イギリスつまみ食い」式というよりは、「ペドロランド」風。「イギリスつまみ食い」から来て下さった方たちも、気楽にお読みください。(つまり、「イギリスつまみ食い」ほど、筆者もリサーチに時間をかけていないということですが。) わたしたちがスペインに家を買おうと決めた1997年には、スペインで家を買うという話になると、いつも語られる怖い話がイギリスにはあった。それは、ある人がスペインで家を買ったのはよかったが、元の持ち主に大きな借金があって、それをすっかり背負い込むことになってしまったというものである。スペインには、借金は不動産について回るという法律がある。つまり、もしだれかが家を担保にして借金をし、それを返済しないまま家を売ったとすると、その家を買った人が前の持ち主の借金を背負うことになる。わたしたちが、比較的名の通った不動産業者を通して、新築の家を買ったのも、このようなトラブルを避けるためであった。もっとも、新築の家とても、まったく安全なわけではない。建設会社が建設中の家を担保に借金をしている可能性もある。建設業者がつぶれたりすれば、借金は新築の家の持ち主が背負うことになる。 その家に抵当がついているかどうかは、土地登記を調べればわかるそうだ。通常、弁護士に調べさせるのだが、それでも発見できないことがあると言う。チェックをするときに抵当をはずし(一時的に金を借りて借金を返済するなどの手段をとるらしい)、チェックが終わったら、また抵当をつけるという手があるのだ。敵もさる者である。 これに対抗する手段としては、土地登記の調査を最初に1度だけではなく、何回か時間をおいて段階的に繰り返すことである。スペインではここまで慎重になる必要がある。 これが今までに恐れられていた落とし穴であった。実は、落とし穴はこれだけではない。最近イギリスのマスコミでも取り上げられて、話題になっているのが、バレンシア地方の土地に関する法律である。この法律によると、市町村の役所の許可があれば、住宅地開発業者は個人の土地(所有地の40パーセントまで)を押収し、それを住宅地の一部として開発し、水道・電気などのインフラ代を土地の持ち主に請求できるというものである。日本やイギリスでも、道路建設など公共の利益のために、個人の土地が収用されることはある。しかし、当然その土地に対する補償として、金が払われるのが常識だ。基本的な人権の保護とも言えるだろう。この法律はその世界の常識を破って、土地の所有者には、取り上げられた土地に対して金は支払われない。それどころか、宅地造成が終わった後、頼みもしないインフラ整備にかかった代金を請求されるのである。(没収された土地の広さにもよるが、今までの事例では、その金額は9百万円から1千8百万円くらいに上ることがあるようだ。)このインフラ整備費が払えずに、家を売らざるを得ないという気の毒な土地所有者もいる。 この法律は1994年に施行され、開発業者にとって宅地開発を容易にし、住宅供給を増やすというのがその目的であった。施行当時は、バレンシア地方の住宅はとても安く、広域の宅地開発はそれほど儲かる仕事ではなかった。そのため、この法律を利用しようという開発業者も現れなかったわけである。ところが、過去3年間くらいで住宅価格は倍になり、この法律を悪用する業者が現れ始めたため、最近にわかにこの法律が注目されるようになった。 イギリスのマスコミで取り上げられ、この地域での不動産売買も深刻な影響を受けたらしく、不動産仲介業者は次の点を指摘して、イギリス人客の不安を鎮めようとしている。(1)対象となる土地は、宅地開発可能と分類されている土地に限られ、その土地が田舎に分類されていれば安全である。(2)山や野原の中のど真ん中など、辺鄙な場所は宅地として魅力的でないので、開発しようという業者はいない。海岸に近い地域や、町や村などの周辺を避ければ安全である。(3)この法律を逆手にとって、自分が開発業者となることも可能である。もし、開発業者があなたの土地を押収して、宅地開発をしようとしたら、あなたもそれに対抗する開発計画を提出しよう。これで少なくとも業者の開発計画は一時停滞するし、うまくいけば、あなたも開発業者として一儲け。 (1)に関しては、田舎に分類されていても安心とは決して言えない。スペインの法律は目まぐるしく変わる。特に、市町村役場の土地区分など、一夜にして農地から宅地に変わったりする。14年前にペドロランド周辺に引っ越してきたイギリス人に、「木のあるところには家は建てられない法律になっているので、自分の家の周りに木があれば、隣に家が建つ心配はない」と言われた。が、木はブルドーザーでなぎ倒され、谷は埋め立てられて新しい住宅地が開発されるのをすでに見てきた。この法律も今は変わっているに違いない。 (2)開発業者にとって魅力的でない土地は、土地の買い手にとってもやはり魅力的ではない。山や野原のど真ん中に住もうという人はそれほど多くはないだろう。とくに、イギリス人が定住したり、別荘として使ったりするには。(3)素人にそんなに簡単に住宅開発ができるか。特に、スペインにはコネもなく、習慣もわからないイギリス人にである。 もちろん、この法律に対して非難は激しい。現在、イギリス領事を含め、ヨーロッパ各国の代表が、バレンシア政府にこの法律の改正を求めている。たぶん、この法律の改正も時間の問題だと思うが、それまではバレンシア地方に大きな庭をお持ちのみなさん、開発業者に目をつけられないように祈りましょう。 ★ ペドロランドの年次住民総会 11月末に開かれたペドロランドの住民総会についてご報告をまだしていなかった。これは、住民管理組合の会長であるヘルムートがドイツに帰るわずか2日前の11月28日に開かれた。スペインの法律によると、会長不在での総会は認められないのだそうだ。 この集会に副題をつけるならば、「旧管理会社の逆襲」ということになるだろう。第1号でご紹介したように、前回の住民総会では、企業の乗っ取り劇さながらの劇的結末で、新しい管理委員会と管理会社とが就任した。ところが、問題は、旧管理会社の人たちはペドロランドの住民でもあるという点である。本来なら、追い出された旧管理会社は潔くペドロランドとは手を切るものなのだが、社員が住民であるために、この集会にも出席する権利があるわけだ。しかも、近所の人の代理投票権まで集めてきた。 前回の総会が、ドイツ人対ドイツ人という対決の様相を呈したのに対して、今回は、スペイン人(新管理会社)対スペイン人(旧管理会社)の対決であったと言えるだろう。微に入り細に入り、旧管理会社メンバーがことごとく新管理会社の揚げ足取りをするのである。1つのことを3ヶ国語(スペイン語・英語・ドイツ語)で説明するので、ただでさえ3倍長い集会がさらに長くなるのだった。 スペイン人が話し合うのを聞いたことのない人だったら、この状況はとても恐ろしかったに違いない。スペイン人の隣人を持つ、ペドロランドのイギリス人住民・クリフは、引っ越してきた当初、このスペイン人家族が今にも殺し合いを始めるのかと常に心配をしていたそうだ。別のスペイン人家族を隣人に持つ、オランダ人のトーシュも、「なんて仲の悪い家族だろう」と最初の頃は思っていたという言う。とにかく、大きな声を上げるのが好きな国民である。そばに寄って話せば小声で済むところを、わざわざ2メートル離れてから大声で話し合うのである。静かに暮らしたいと思ったら、スペイン人の近所に住むのは避けることだ。 この国民性を割り引けば、今回の総会は比較的穏やかだったと言えるかもしれない。議事進行中、あるスペイン人男性が発言した。何かを司会進行役に頼んでいるようだったが、その劇的な話し振りには感動した。身振り手振り、表情もさることながら、人々の心を打ったのはその言葉である。スペイン語は神と話す言葉だと聞く。あんなふうにお願いされちゃったら、神様もよっしゃ、一肌脱いでやるか、と思うところだろう。たぶん、言っていることは、会計報告を口頭でされてもよくわからない、紙でくれなくちゃ、というようなことだったに違いない。この発言は通訳されなかったのだが、すぐ後に印刷された会計報告が配られた。 今回の総会の最大の収穫は、スペイン人住民が住民管理組合の委員会に加わったことだろう。今回副会長を辞任したドイツ人のロルフに替わって、スペイン人のアンヘルが副会長に就任した。前回の委員総入れ替え以来、スペイン人の代表がいなかったので、この決定は喜んで迎え入れられた。というわけで、ドイツ色の濃かった前回の総会に比べて(というか、ドイツ人の勢いに圧倒されたと言うべきかもしれない)、今回の総会は全般的にスペイン色の濃いものとなったと言えるだろう。 今後とも、ペドロランドでの進展をご報告して行きたいと思います。 ★ ちょっと宣伝 1月中旬に日本で発行されたハリー・ポッターのファンブックの中で、わたしのホームページが紹介されています。イギリスの文化や習慣がわかると、ハリー・ポッターはもっとおもしろいというコンセプトの「ハリー・ポッターを10倍楽しむ法」というコーナーの中の一部が掲載されています。 『マグルからハリー・ポッターと魔法の世界へ』 もし本屋でお見かけになったら、ぜひお手にとってご覧くださいね。ハリー・ポッターファンにはたまらなく楽しい本であることは保証付きです。 ということで、今回はこのへんで。また次号でお会いしましょう。 |